酒サ様皮膚炎に気をつけて

)酒サ様皮膚炎とは

酒サ様皮膚炎は顔面にステロイド外用剤を長期間使用した後に見られる副作用である。患者が自分でステロイド軟膏を薬局で購入した場合や、専門でない医者が不注意にステロイド軟膏を処方したケースに見られる。ステロイド軟膏は炎症を抑えるには劇的な効果があるが、同時に皮膚の血管を収縮させ表皮を薄くする。ステロイド外用剤を使っている時は、赤みが消え肌はすべすべするが、それを止めると皮膚が赤くなる。そのままステロイド軟膏を使い続けていると、口の回り、鼻の回り、頬や目の回りなど顔面全体が赤みを帯び、ほてり感が強く、ニキビ様のブツブツもできる。これを酒サ様皮膚炎といい、患者は薬の副作用ではないかと心配になり専門医を訪れる。

)リバウンドの症状 

合計 : 数

病名

原因

酒サ様皮膚炎

接触皮膚炎

総計

イヌの毛

1

 

1

カビキラー

 

1

1

カミソリカブレ

 

1

1

ストレス

1

 

1

ネコの毛

1

2

3

パーマ

 

1

1

温泉

 

2

2

化学物質

2

10

12

化粧品

4

11

15

1

16

17

機械油

 

4

4

脂漏性湿疹

8

 

8

鹿革

 

1

1

漆ぬり

 

1

1

松の花粉

1

 

1

消毒液

 

2

2

植物

1

19

20

灯油

 

1

1

銅の粉

1

 

1

日焼け

1

1

2

農薬

 

2

2

発汗

 

1

1

疲労

1

 

1

不明

 

2

2

毛膿炎

1

 

1

総計

24

78

102

酒サ様皮膚炎の治療には何といってもステロイド軟膏を止めなければならない。そうすると次のようなリバウンドがある。「ステロイド外用剤を長期間使っていた副作用で、血管が拡張しているので、顔全体が赤みを帯び、ほてり感がある。最初は悪化したように見えるが、1ヶ月から2ヶ月間、がまんをすれば赤みやほてり感がなくなってくる。禁煙の時に見られるニコチン中毒の禁断症状に似ている」。以上のことを患者に説明して納得してもらうことが重要である。患者の医者に対する不信感が強いが、その一つがステロイド外用剤の誤った使い方による酒サ様皮膚炎である。

)ステロイド外用剤が使われる皮膚疾患

1)接触皮膚炎(いわゆるかぶれ)

2)アトピー性皮膚炎

3)脂漏性湿疹(皮膚がかさかさして細かい鱗屑がある)

4)女性が化粧の下地に使用していることがある

5)その他

 顔面の接触皮膚炎の場合にはその原因を見つけ、その原因物質に触れぬ様に指導し,ステロイド外用剤の使用期間を短くする。従来から顔面の接触皮膚炎は化粧品かぶれ、ウルシなどによる植物によるもの、日光皮膚炎など考えられているが、原因が特定できない症例も少なくない。アトピー性皮膚炎の顔面潮紅型は化学物質によるかぶれがあるが、接触皮膚炎でも同様で化学物質による症例がある。

 酒サ様皮膚炎の原因として最も多いものは脂漏性湿疹で、その他には化粧品かぶれ、化学物質過敏などがある。顔面の皮疹に対して治療をする際はその原因をみつけだし、ステロイド軟膏を使い過ぎないように気をつけなければいけない。