アトピー性皮膚炎の概念、臨床的特徴

)概念

アトピー性皮膚炎とは1933年にSaltzbergerらが提唱した疾患概念である。彼らはCocaのアトピー概念にもとづいて発症する湿疹をアトピー性皮膚炎と呼称した。この患者および家族には次のようなatoic stigmata(アトピー性変質徴候)を伴う。

@家族内に気管支喘息・枯草熱・アトピー性皮膚炎がでやすい、

A通常の食餌または吸入抗原(たとえば卵白・ヒト落屑・塵埃・花粉)に対する皮内反応が陽性にでやすい、

B血液好酸球増多や、血清IgEの高値がみられる、

C血清中の受動転嫁抗体(PK抗体)認められる、

Dいろいろなストレス(温度・湿度・外傷・感染・精神的緊張)に対して過敏となる、

E薬剤や異種血清に対してアナフィラキシーを起 こすことがある

F白色描画反応(皮膚をこすると充血線を生ぜず、貧血性白線を生ずる)、アセチルコリン遅発蒼白反応(アセチルコリン皮内注射後3〜5分で蒼白班)など血管反応の異常を示す(右上)。

 

わが国ではドイツ医学の影響が強く、汎発性神経皮膚炎 (neurodermitis disseminata)、ベニエ痒疹(prurigo gestationis of Besier)、喘息湿疹(Asthma-Ekzema)などと呼んでいた。1960年(昭和35年)Salzbergerが来日し、それらをアトピー性皮膚炎と診断してから日本でもアトピー性皮膚炎という病名および概念が受け入れられるようになった。

 

)臨床的特徴

 

アトピー性皮膚炎は、乳児期から青年期までの若年層に多い慢性の皮膚病で,乳児期に発病し、多くは2〜4歳ごろまでに治癒する。幼少児アトピー性皮膚炎に移行した患者の多くも12頃までに治癒するが、残りの症例が成人型アトピー性皮膚炎となる。臨床的には、乳児期はジクジクした“湿潤皮疹”が中心であり、成長とともに乾燥傾向(右中)を示し、顔面蒼白、下眼瞼の色素沈着と皺(Denie’s line)(右下)、毛孔性角化(さめはだ)などのアトピー皮膚(atopic skin)が認められる。成人型では皮膚が肥厚し粗造となり、顔面はジクジクした浮腫性紅班となる。いずれの場合も非常な痒みを伴う。また、乳児期までに治癒した患者が社会にでてからストレスや化学物質過敏などが誘因となり皮膚炎が再燃することがある。