アトピービジネスに騙されないために

 

)アトピービジネスとは

 

アトピー性皮膚炎をこじらせて重症化した患者の悩みに付け込んで「これを使えば、アトピーは必ず治る」「○か月で治る」など驚異の治療法と称して、高額な商品を売りつけ、特殊な治療法を勧めることをいう。業者はステロイド軟膏を悪の権化にみたて、「ステロイドを使っている間は治らない」、「悪化するのはステロイドのせいだ」と不安をあおり、その代わりに自分の商品・特殊療法を宣伝する。

 

)何故アトピービジネスが増えたか

 

アトピー性皮膚炎の発症は、体質や環境などの関与しているが、真の原因は解明されていない。治療法も確立さされたものはなく、個人個人により違うため、非科学的な治療法が入りやすい。従来からアトピーの治療はステロイド軟膏外用による対症療法である。従って「アトピーはステロイド薬では治らない。体の中から根本的に体質を変えなければだめですよ」という誘いに乗りやすい。また、ステロイド外用剤も乱用すると副作用やリバウンドがあり、患者の中にはステロイド恐怖症ともいうべきステロイド不信を持つ人が少なくない。「いくらステロイドは大丈夫ですよ」と医師が説明しても、アトピーの原因、増悪因子など充分な説明しないで、ただステロイド軟膏のみを処方する治療に患者は納得しない。

 

)マインドコントロール

 

手口のはじめはアトピー性皮膚炎を「難病」と思い込ませることにある。「難病であるのでステロイドを使っていたら一生治らない」と繰り返し、患者に絶望感を与える。そしてステロイド外用薬の副作用を極端に強調し、不安感をあおる。業者は「アトピーからの離脱」「水でよくなるアトピー」「ステロイド治療こそ重症アトピーの根源」などのパンフレットや書物をみせ、アトピーを治すためには体の中から体質を変える必要を強調する。バイブル療法といって、治癒した具体例をもっともらしく示し患者を納得させ、ステロイドのかわりに業者の商品・特殊療法を使えばよくなると宣伝する。

 

患者の症状が悪化した時は「体の中の毒が出ているので、いったん全部出した方がよい、過去のステロイド外用剤のリバウンド現象で、よくなる前の好転現象です」と「好転反応」であると言い逃れ、さらに症状が悪化して特殊治療に疑問をはさむと「よくならないのは、自分の努力が足りない」「食べ物が悪い」「ストレスが溜まっている」など、誰にも心当たりがあることをいって責任を逃れる。その後、症状がひどくなると、患者は学校や会社を辞めて、家に引きこもり入院することになる(右表)

 

)アトピービジネスの問題点

 

a)アトピー性皮膚炎への正しい理解から患者を遠ざけ、誤った治療により、病気が悪化する。

b)症状の悪化をすべてステロイドのためと誤解して、アトピーの悪化因子などを見逃してしまう。

c)一生治らない病気が治るのだからこれくらいは安いと言われ、高価な品物を買わせられる。

d)非科学的な特殊療法が蔓延しており、その結果に対する責任も不明確である。

e)マスコミ報道にも問題があり、「アトピーがすぐ治る」などと誤って報道すると、患者がその特殊療法に飛びついてしまう。

f)一番問題なのは一部の皮膚科医が脱ステロイド治療と称して、アトピービジネスを行っていることである。彼らはステロイドを使わなくて炎症をどうやって抑えるかを、具体的な方法と科学的な根拠を示さずに、代わりに特殊療法を行い、健康食品などを売りつける。アトピービジネスによる被害者が多く出る原因である。