皮膚病の治療法(教科書に書いてない治療法)
皮膚病の診断、治療についてはいろいろの考え方、方法があり教科書的な治療ではあまりうまくいかない例が数々あります。思いつくままに自分が行っている治療法をいろいろ書いてみたいと思います。但し、これらの治療法は保険では認められませんので、自らの責任で参考にしていただければと思います。
足白癬…いわゆる水虫です。趾間型で皮膚が浸軟したり、ジクジクしているときは抗生物質含有のステロイド軟膏をしばらく(1週間が限度)外用してから、抗真菌薬を使うと効果的です。1週間くらいステロイド軟膏を使用しても足白癬が増悪することは殆どありません。じくじくしている水虫にはじめから抗真菌剤を用いると、かえって症状が増悪する例が見られます。これは抗真菌剤に含まれるサリチル酸がびらん面を刺激するのではないかと考えます。ただし足白癬の診断には顕微鏡で真菌を証明する必要があります。
帯状疱疹…後根神経節に潜伏感染していた水痘帯状疱疹ウィルスが何らかの原因で神経に沿って帯状に出現し、疼痛を伴うのが特徴です。特に高齢者の患者さんは重症になりやすいようです。治療法としてはアシクロビル(商品名ゾビラックス)用いられるようですが、ゾビラックスは非常に高価であるため、私は全身状態がよほど悪くなければステロイド内服を行います(4日ないし5日が限度です)。これはステロイド内服による抗炎症作用を期待するわけで、ステロイド内服により水泡、紅班、疼痛などが軽減します。特に顔面(三叉神経領域)や胸部(肋間神経領域)の帯状疱疹には効果的です。
一般にウィルス性の疾患にステロイド内服は禁忌とされていますが、今までの経験から免疫力のある人にステロイド内服を数日行っても殆ど問題はありません。但しステロイド内服ですから糖尿病、胃潰瘍の有無など全身状態に気をつけるのは当然です。
アトピー性皮膚炎…ステロイド軟膏、ステロイド内服がポイントです。ステロイド軟膏の使い方は医師の考え方でいろいろありますのでくわしく述べません。ただし顔面にはステロイド軟膏は避けるべきと思います。それではどうするかというと私は短期間(4日が限度ですが)ステロイド内服を行います。ステロイド内服は乱用さえしなければ顔面がジクジクしている時は効果的です。患者さんは医者の治療に不信感を持っている場合が多く、一時的ではありますが皮膚炎の改善方法をあることを教えてあげるのもよいと思います。皮疹がよくなってから非ステロイド軟膏または保湿剤を使用し、原因となりそうな化学物質を避けるように指導しながら自然治癒を期待します。
ステロイド内服は問題だと考える人もありますが、2ヶ月ないし3ヶ月に一回ぐらいの内服はほとんど問題ありません。全身の発疹が増悪しているアトピー性皮膚炎の場合にもステロイド剤内服により発疹が改善され、むしろステロイド軟膏軟膏の使用量はかなり減ってきます。ただし日常生活におけるいろいろな注意を指導することはもちろんです。
乾癬…難治性皮膚疾患の代表です。ステロイド軟膏、ビタミンD3軟膏(ボンアルファ)が用いられますが余りよくなりません。エトレチネート(チガソン)はいろいろの副作用があるといわれますが、口唇の乾燥感の他にはあまり重大な副作用を経験していません。むしろステロイド皮膚といわれるように皮膚の非薄化のほうが問題だと思います。ただし問題点はチガソンの薬価が非常に高価であるという事です。
抗アレルギー剤について(アレルギー用薬を参照してください)…皮膚科の病気の7から8割はアレルギーによるといわれその治療薬として抗アレルギー剤がよく使われています。しかし私は抗アレルギー剤をほとんど使いません。その理由は抗アレルギー剤の値段が高い割にはいわゆる抗ヒスタミン剤(ポララミン、タベジール、ゼスランなど)と効果の点であまり違わないように思います。蕁麻疹、花粉症、皮膚掻痒症、接触皮膚炎など治療には抗ヒスタミン内服で十分と思います。製薬会社のMRの人たちがいろいろ宣伝しますが、薬価の高い薬が必ずしも効くわけではなく、要は医師自身が自分の経験から考えて薬を使うべきです。