地域性花粉症
1)地域性花粉症とは
長野県東信地方では5月から6月にかけてシラカバ,ミズナラ、コナラ、アカシア(ニセアカシアともいうが正式な名前はハリエンジュ)、クルミなど地域性花粉症が見られる。そのほかイネ科植物に属するカモガヤ花粉症もある。
2)アカシア花粉症
アカシアと呼ばれているものは本物のアカシアではなく北アメリカ産のニセアカシア(ハリエンジュ)のことで、本物のアカシアはミモザと通称される事が多い。ハリエンジュという名は葉柄の基部に托葉が変化した一対に刺があることから付けられた。北米原産で砂防用として植えたものが各地で繁殖している。高さ15ないし20メートルにもなる高木で、葉は奇数羽状複葉で、小葉はやや薄く9〜19枚、葉の基部には一対のとげがある。5から6月頃、葉液から総状花序が下垂して、小さな白色の蝶形花が開く(右図)。花には芳香があり、ミツバチをはじめ多くの昆虫が訪れる。この花粉によるアカシア花粉症はあまり知られていないが、長野県東信地方ではかなりの頻度で見られる。
3)クルミ花粉症
長野県では東信地方を中心にカシグルミが特産品として栽培されている。果樹園の他に個人の屋敷内に植えられていることも多い。クルミの葉は9〜15枚の小葉からなる大型の奇数羽状複葉でビロード状の星状毛を密生するが、長野県で栽培されているものはカシグルミで全体は無毛で小葉は5〜9枚。雌雄同株で4〜5月、前年の枝に緑色の雄花穂が尾状に垂れ下がり(右図)、雌花穂はその年の若枝の先に直立する。5月頃かなりの花粉が飛散し、この花粉アレルゲンを吸うことによりクルミ花粉症を発症する。
4)カモガヤ花粉症
イネ科花粉症の原因植物としてカモガヤ、スズメノテッポウ、ホソムギなどがあるが、その中ではカモガヤ花粉症が多い。カモガヤはヨーロッパ原産の多年草で、オーチャード・グラスの名で牧草として広く栽培されている。わが国では各地の荒地に野生化している。小穂が鳥の足の形に似ているので、英名をCocks-Footというが,これをカモと間違えてカモガヤという名がついた。高さは30ないし100cmになる。花期は5〜6月で,花穂の枝は下部のものほど長く、枝先に円錐形に広がった淡緑色穂をつける(右図)。小穂は3〜5個の小花からなり、花穂に枝に固まってつき、この小花が飛散してカモガヤ花粉症を生ずる。
一般にイネ科植物は背丈が低く、土手や荒地などに繁殖する。近年は荒地が増え、カモガヤが繁殖したため、カモガヤ花粉症が増えつつある。花が咲く前に除草することが望ましい。イネ科植物はスギやヒノキ(花粉の粒子は30μm)に比べ花粉の粒子が小さいので、喘息を併発することがある。