免疫細胞について
免疫系は自然免疫と獲得免疫に分けられるが、両者は相互に関連しあってその防御能を発揮する。自然免疫は白血球、食細胞(単球、マクロファージ)などの細胞が関与し、補体、インターフェロン、リゾチームなどが可溶性因子として作用する。それらは感染初期の防御反応であり、次いでリンパ球の作り出すサイトカインや抗体による免疫反応が加わる。
1)免疫細胞
骨髄系の幹細胞から生まれるのが、好中球とマクロファージである
a)好中球は10〜15ミクロンで、一日に約1000億個作られるが寿命は数日である。細菌やウィルスが体内に侵入すると、多数の好中球が集まり細菌などを貪食するがすぐに破裂してしまう。化膿した傷口にたまる膿(うみ)は、死んだ細菌や破裂した好中球の残骸である。
b)マクロファージは10〜30ミクロンと免疫細胞の中では最も巨大で、アメーバのように移動し細菌やウィルスを貪食する。マクロファージはT細胞に細菌やウィルスの蛋白質(MHC蛋白質という)情報を提示する。
リンパ球から生まれるのがT細胞とB細胞である。
c)T細胞は3つに機能分化する。T細胞は胸腺を経て、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞の3タイプに機能が分かれる。ヘルパーT細胞はマクロファージの抗原提示を認識すると、キラーT細胞とB細胞に指令を出す。
キラーT細胞 ウィルスやガン細胞に取り付いて破壊
T細胞 ヘルパーT細胞 B細胞に抗体をつくらせ免疫力を高める
サプレッサーT細胞 免疫反応を必要に応じて終了に導く
d)ヘルパーT細胞は免疫細胞の司令塔の役割を果たす。マクロファージからの抗原情報を受けるとインターロイキン分泌してキラーT細胞を活性化させる。そして応じB細胞にも指示して抗体を作らせる。なお、ヘルパーT細胞という免疫細胞は、機能的にTh1型とTh2型に分けられる。細菌やウィルスなどの異物を攻撃、破壊し免疫反応を高めるのがTh1型である。Th2型はカビやダニに対するIgE抗体を作り、花粉症などのアレルギー疾患を惹き起こす。免疫反応を高め、アレルギー疾患を減らすにはTh1型とTh2型のバランスを保つことが大切となる。
e)キラーT細胞はウィルスや細菌に感染した細胞やがん細胞を攻撃する。これらの感作リンパ球による免疫反応は細胞性免疫と呼ばれる。
f)サプレッサーT細胞は免疫反応を必要に応じて終了に導く抑え役である。
g)B細胞はヘルパーT細胞の指示に基づいて抗体(免疫ゴロブリン)を作る。抗体はY字型をした矢印のような型で二股に分かれており、先の部分がウィルスや細菌の抗原と結合することにより無毒化する。この抗体は液性抗体と呼ばれ、血清中の抗体価を測定することができる。
2)免疫反応
ウィルス感染を例にとり、3つのT細胞の働きを説明する。まず、体に侵入したウィルスに対してマクロファージが貪食すると同時に、そのウィルスの断片(抗原)を細胞表面に提示する。ヘルパーT細胞はマクロファージの提示したウィルス抗原を認識すると、インターロイキンを分泌してキラーT細胞に命令し、ウィルスを攻撃させる。キラーT細胞は感染細胞の細胞膜を破壊し、たんぱく質分解酵素(グランザイムなど)を注入して、核内で増殖しているウィルスを死滅させる。キラーT細胞だけではウィルスの増殖を防げないときは、ヘルパーT細胞はB細胞(形質細胞)に指示して抗体(免疫グロブリン)を作らせる。ウィルスに対する抗体ができると、その抗体がウィルスに結合して無毒化する。このようにしてウィルス感染に対する排除作戦が終わると、今度はサプレッサーT細胞がでて、過剰な免疫反応にならないようにコントロールする。
免疫反応においては、ヘルパーT細胞はマクロファージの活躍でウィルスの侵入を認識する。キラーT細胞はヘルパーT細胞からの指令により活動し始める。なお、後に述べるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)はマクロファージからの抗原表示の標識を必要としない。
3)終生免疫
ウィルスなどの抗原刺激を受けるとB細胞は形質細胞に分化し抗体(免疫グロブリン)を作り出す。最初に抗体が作られるのを一次免疫反応(primary immune
response)という。その抗原刺激は終生Bリンパ球に記憶され(免疫学的記憶)る。このB細胞は再び同じ抗原(ウィルスなど)が体内に入ったときは即座に大量の抗体を作り(二次免疫応答secondary
immune response)病気の発症を防ぐ。なおリンパ球はそれぞれの異なった抗原に対して一つずつ(特異性という)反応する。