NK細胞とがん
1)NK細胞の特徴
生体はTリンパ球を中心とした免疫細胞によりがん細胞の増殖を未然に防ぐ(免疫監査機構)。中でも重要な働きをするのがNK細胞である。活性化されたNK細胞には核周囲の細胞質に多数の顆粒を貯えている。NK細胞はがん細胞に顆粒を注入して攻撃する。
2)がん化促進因子
日々代謝を繰り返す人体では、1日あたり一兆個以上の細胞が生まれ、そのなかには数千個のがん細胞ができると推定されている。「なぜがん細胞ができるか」つまり正常な細胞がなぜとつぜん変異するのか、詳細な仕組みはわかっていない。がんはがん遺伝子の活性化、がん抑制遺伝子因子の不活性化、あるいはその組み合わせによって発生する遺伝子の病気と考えられている。がんができるには二つのステップがある。初期段階では、正常なDNA遺伝子が紫外線や放射線、ウィルスなどさまざまな原因で傷つけられる。傷ついたDNA遺伝子は壊死したり修復されたりするが、いくつかのDNA遺伝子が異常な状態で持続する。発展段階では、DNA遺伝子の異常が食品添加物やカビ、化学物質などの影響を受け、がん細胞に変化する。
がんの発生原因は、たばこ30%、食べ物35%、ウィルス10%前後と考えられており、約75%が私たちの日常生活に深く関係していることから、がんは生活習慣病の一つで、長い時間を経過した慢性の疾患と言われる。これらがん化促進因子を減らすことにより、がん細胞が出来にくくすること可能となる。
a)活性酸素の影響:活性酸素は化学的に不安定で、他の物質と結合して酸化させる。活性酸素は細胞膜や遺伝子に対して、強力な酸化力で傷をつける。
b)発ガン物質:タバコの煙、水道水に含まれるトリハロメタン、カビの一種であるアフラトキシン、ニトロソアミン(胃の中で亜硝酸塩とアミンが反応してできる)など。
c)ウィルス:パピローマウィルスは子宮ガン、皮膚ガン、肛門ガン、食道ガンを、ATLウィルスはT型白血病を、EBウィルスは咽頭ガンを引き起こす。
d)ストレス:NK細胞活性が下がるため、ガンに対する免疫力が低下する。
e)運動不足:運動不足も活性度を下げるので、楽しみながら運動して免疫力を上げるのがよい。
3)免疫監査機構
がん細胞が出来てもがんになりにくいのは免疫系システムが働くからである。体内でがん細胞ができると、まずNK細胞ががん細胞を攻撃する。活性化されたNK細胞は顆粒を貯えており、がん細胞と結合して顆粒を注入して死滅させる。次いでマクロファージ(抗原提示細胞)ががん細胞の抗原をヘルパーT細胞に提示する。ヘルパーT細胞が抗原を認識すれば、キラーT細胞に指示してがん細胞を攻撃させる。
免疫系細胞はがん細胞を攻撃するが、それにもかかわらず「がん細胞が増殖し、発病」してしまうのは何故か。NK細胞活性が低下するとがん細胞が増えやすい。また免疫細胞は細菌やウィルスの抗原を非自己として認識するが、自分自身の細胞が変化したがん細胞を非自己と認識出来ないことが少なくない。そのためがん細胞は免疫細胞からの攻撃を免れることも多く、がん細胞が免疫系の監視をくぐって増殖しがんを発病する。
4)免疫力
NK細胞活性が強いと、ウィルスが侵入しても風邪をひきにくくなる。抵抗力が強い状態である。30歳を過ぎると毎日数多くのがん細胞が体の中にできるようになるが、NK細胞ががん細胞を見つけ除去してくれる。がん細胞が増殖してがんを発病する人、ならない人はNK細胞活性度が高い、低いの違いによる。日頃から免疫力を高めるように努めると、自分の体を外敵(細菌、異物、がん細胞など)から守り病気になりにくくなる。
5)免疫力を高めるには
a)ストレスを貯めないこと
b)栄養バランスの取れた食事を摂ること
c)化学物質を含んだ食事は控えるようにすること
d)適度の運動をして、睡眠を十分にとること
e)嗜好品(タバコ、お酒)などは控えること
f)加齢により抵抗力は低下していくが、年齢に応じた抵抗力を維持することが大事である
これらのライフスタイルを心掛けることで免疫力を高めることができる。