ウィルス感染と免疫
1)ウィルス抗原の多様性
ウィルスは他の病原体と異なってきわめて複雑な抗原性を示し、それらに対する生体の免疫反応も多様である。ウィルス自体の菌体成分が抗原性を発揮すると同時に、細胞内でのウィルス増殖に伴って作られる酵素やその他成分も抗原になり得る。ウィルスはその増殖様式から2群に分けられる。
第I群は細胞外に拡がるもので、ポリオウィルスなどのEnterovirusやRhinovirus(感冒症状を起こす)など。これらのウィルスは細胞外に出るので、液性抗体による免疫反応が有効である。
第II群は細胞間同士が接触し、細胞膜を破壊して次々にウィルスが増殖するもの。これらの増殖様式をとるウィルスでは感染細胞の膜が変性し、新しい抗原として認識されるので細胞性免疫が反応する。同時に液性免疫も関与する。この群に含まれるものとしては、Myxovirus(インフルエンザ)やParamyxovirus(はしか・ムンプス)などがある。
2)ウィルスに対する感染防御機構
a)
抗体による液性免疫
特異抗体(免疫グロブリン)によって感染が防御される。特異抗体がウィルスを中和、無毒化し、マクロファージがウィルス・抗体複合体を貪食する。
b)感作リンパ球による細胞性免疫
感作Tリンパ球による細胞性免疫である。ヘルパーT細胞がマクロファージを活性化してサイトカインを分泌させ感染を阻止する。そしてヘルパーT細胞の指示を受けたキラーT細胞がウィルスを攻撃する。
c)インタフェロンの作用
ウィルスが感染した細胞から分泌されるインタフェロンもウィルス感染に対抗する。その感染阻止作用は特定のウィルスにのみでなく、さまざまなウィルスに対して対抗する。なお、インタフェロンはウィルスの増殖と同時に分泌され、抗体が作られる前に抵抗性を示す。