花の旅 白馬岳

北アルプス北部、豊かな残雪を纏った白馬連峰は、日本を代表する高山植物の宝庫です。三年前に私と家内は大雪渓を登リ、葱平(ねぶかっぴら)ではしなのきんばいなどのきれいな「お花畑」を見た。白馬岳からの帰りは杓子岳、白馬鑓ヶ岳を通り、大出原ではちんぐるま、はくさんこざくらなどを見ながら、鑓温泉を経由して猿倉に戻った。花の美しさは非常に印象的で、今回もあの時のようなきれいな花を見たくて白馬岳に登ることにした。今年は大雪渓を経て白馬岳へ登り、帰りは小蓮華山、はくさんこざくら、ちんぐるまのお花畑がある白馬大池を経て栂池自然園に降りる予定を立てた。

 

2000719日早朝、630分に自宅を出て、上信越道、白馬長野オリンピック道路を通り、8時頃白馬駅に到着した。近くの駐車場に車をとめタクシーで猿倉に向かった。猿倉で準備体操をして840分白馬岳を目指して出発した。登山道に入るとたくさんのブナの木が見られ、そのブナ林を過ぎると林道に出た。林道を5分ほど歩くと鑓温泉に行く道が現れた。三年前、大出原で見たはくさんこざくら、ちんぐるまなどのお花畑、鑓温泉から猿倉までの距離が長かったこと、多くの雪渓があったこと、途中にライチョウに出会ったことなどについて家内と話しながら林道をゆっくり歩いた。当日は梅雨明け直後ということで暑い日ざしが我々を照らし非常にむし暑いスタートであった。林道を終え登山道に入ると少し涼しくなり、緩やかなのぼりを登っていくと村営白馬尻荘が見えてきた。白馬尻荘の周囲は雪解けしたばかりで、きぬがさそう,さんかよう、しらねあおいの群落が私たちの疲れを癒してくれた。

 

白馬尻で休憩した後、大雪渓の入り口へ向かった。白馬大雪渓の入り口は白馬連峰高山植物帯と書かれたケルンのあるとことであるが、今年は雪渓の雪が多くそこまで行く登山道も雪で覆われていたため白馬尻小屋のすぐ上から大雪渓に入った。前回は大雪渓にたくさんの登山者がいて蟻の行列のようにゆっくり登ったが、今回は登山者の数は少なく私たちは約1時間20分で葱平(ねぶかっぴら)に到着した。前回は葱平からみたお花畑の美しさに感激したものだが、今回は登山道の左右はたくさんの雪渓で覆われ前回ほどの高山植物を見ることは出来なかった。そうはいってもしなのきんばい、みやまおだまき、よつばしおがま、みやまたんぽぽなどの花が咲いていた。私たちはジグザクの急登がつづく葱平を過ぎ小雪渓に着いた。

 

小雪渓のトラバースは前回より距離が長かった。トラバース途中のすれ違い待避所から下方を見ると今まで登って来た広大な大雪渓が見えた。小雪渓を過ぎるとすばらしい「お花畑」が見えるはずだったが、今年は雪渓に覆われていた。登山道の近くにしなのきんばい、ちんぐるまのほか、いわべんけいみやまおだまきみやまだいこんそう、ミヤマタンポポなどが咲いていた。前回は頂上宿舎のすぐ下でたくさんのくろゆりを見たが、今年はそのあたりも雪渓で覆われ、前回ほどくろゆりを見ることが出来なかった。私たちは午後2時ごろ村営頂上宿舎に着いた。

 

頂上宿舎でひと休みし主稜線を右に進んだ。登山道の傍らにはたくさんのウルップソウやつくもぐさが見られた。ウルップソウとつくもぐさは花のシーズンが6月下旬から7月上旬のため多くのウルップソウやつくもぐさの花は終わっていた。いろいろな高山植物を見ているうちに花の状態にあるつくもぐさを見つけた。つくもぐさ(九十九ぐさ)は高原に咲くおきな()ぐさ(菅平の花を参照)と同属種であり、花が終わると花柱が羽毛のかたまりになる特徴を持っている。また、よつばしおがまたかねうすゆきそういわうめ、むしとりすみれ、ミヤマタンポポ、イブキジャコウソウ、おやまのえんどうなどが登山道の周りに咲いていた。

白馬岳山頂の近くの大きな石とハエマツの間にライチョウがいた。私はライチョウが石の影から出てくるのをじっと待った。私のデジカメは3倍ズームで最大に拡大してもはっきりとライチョウを写すことが出来なかった。頂上近くではウルップソウ、つくもぐさの他にはくさんいちげの群落ともえそうなど見られた。白馬岳山頂で周囲を見渡すと杓子岳、鑓ケ岳が大きくそびえ、その右側遠くに剣岳、立山が見えた。白馬岳山頂から信州側を見ると今朝登ってきた白馬尻小屋、大雪渓、葱平が望むことが出来、これらが思ったより急勾配であったことに驚いた。

翌日はご来光を見るため早朝4時に起床した。頂上宿舎の後ろにある丸山に登り、452分の日の出を眺めたが、残念ながら飾山からの太陽はうすい雲に覆われていた。西側をふりむくと剣岳、立山、その遠くに槍ケ岳、穂高連峰まで見ることが出来た。7時に頂上宿舎を後にして、昨日と同じ花をもう一度眺めながら白馬岳山頂を越え小蓮華山へ向かった。私たちは後方に杓子岳、鑓ヶ岳、剣岳、立山を見て、左側には白山を見ながらの稜線歩きで、白馬岳から三国境へのなだらかな登山道の傍らにウルップソウ、つくもぐさ、いわうめ、はくさんいちげ、たかねうすゆきそうなどが見られた。

雪倉岳への登山道との分岐点である三国境の近づくと左側の下り斜面の岩礫にコマクサの大群落が見えた。この大群落は私が住んでいる東部町の三方が峰のコマクサよりはるかにスケールが大きく非常に感激した。ただし、私のデジカメでは遠くにあるコマクサを写真に撮ることは出来なかった。三国境から小蓮華山まではアップダウンが続き、山稜は二重山稜となっておりその窪地にたかねつめくさみやまあずまぎくたてやまりんどう、たかねなでしこ、はくさんちどりあおのつがざくら、はくさんふうろなど咲いていた。小蓮華山で休息をとり、白馬岳を見ると長野県側の険しさがよくわかった。残念ながらこの山頂から白馬尻小屋と大雪渓は雲の覆われているため見ることは出来なかった。

小蓮華山から白馬大池までの稜線歩きは、3つ4つのピークを越えたり、まいたりして雷鳥坂を下った。その途中の登山道の左右にみやまきんぽうげはくさんこざくらなどが見られた。ハイマツ帯にはいるとキバナシャクナゲが混じりハエマツの下にリンネソウが見られた。白馬大池の近くになるとちしまぎきょう、はくさんこざくら、コマクサが咲いていた。私は2年前に白馬大池に来たことがあり、その時の池畔に咲いたちんぐるま、はくざんこざくらの大群落に感激したが、今年はそれらの場所の多くは雪で覆われていた。

白馬大池で昼食を食べ、栂池自然園に向かって出発した。大きな岩を飛び移りながら乗鞍岳を越えた。乗鞍岳から天狗原までは大部分が雪渓に覆われていた。天狗原から栂池自然園に下る登山道にいわなしが咲いていた。240分に栂池自然園に到着した。私たちの花の旅は高山植物を見たり、写真に撮ったりのゆっくり歩きであった。その後は、ロープウエーで栂池に下り、タクシーで白馬まで戻り、その後は来た時と同じ道を戻って自宅へ帰った。

3年前の花の旅は葱平(ねぶかっぴら)でのしなのきんばい、ちんぐるまなどの「お花畑」に感激し、頂上宿舎の下では多くのくろゆりが見られた。今年は残雪が多くそれらの「お花畑」は雪渓に覆われていた。また、鑓ヶ岳へ行く途中ちょうのすけそうを見たが今回はちょうのすけそうを見ることは出来なかった(なお、ちょうのすけそうの写真は次ページの八ヶ岳登山記にあります)。鑓温泉への途中にある大出原の「お花畑」ではピンクのはくさんこざくらが見事であったが、今回の白馬大池でのはくさんこざくらは大群落というほどは咲き乱れていなかった。私たちは2年前に白馬大池に来たが、その時見たはくさんこざくら、ちんぐるまの大群落は印象的であった

 

今年は雪解けが遅かったので6月から7月はじめに咲くウルップソウ、つくもぐさ、いわうめなどの花を見ることが出来た。ライチョウは[生きた化石]といわれ、国の特別記念物天然に指定されて保護されているが、私たちは3年前に大出原から鑓温泉への雪渓近くで、今回は白馬岳山頂のすぐ下の石とハエマツの間にに見ることが出来た。また2年前に栂池から白馬大池へ行く途中の乗鞍岳山頂で、本年7月に唐松岳山荘への登山道でもライチョウが姿を見せた。